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僕ら× 1st.

第3章 2人の証 --Ior,Hzm

「お前のいない間に、宮石のこと苛めたりしないよ」

顧問……同好会発足以来、特別扱いはしてるけど真面目草食受身な根岸は、彼女を色恋の対称としてはみていない。
クラス違えど、可愛い自分の生徒と思ってくれている。
僕の気持ちも知っているし、味方に適任だ。

それに何たって僕らは、根岸顧問と中高合同吹奏楽顧問の笹木を結びつけたキューピッドなんだから。
当人たちは、隠しているつもりみたいだけど。

顧問のジャズ好きは笹木からきているものだった。
僕らの担当顧問になったことで接点が増え、2人はつきあうようになった。

クラリネット吹きの笹木が、僕たちとセッションしたいと言いだし、根岸はトロンボーンを練習し始めた。

演奏はまだ叶っていないが、顧問としては充分だろう。
幸運を祈るよ。

「うん、お願い。それと、僕のいない間に男を入部させないでね?」

「そんなのわかんないよ」

「じゃあ音楽室の鍵、ドアも窓も壊していい?」

「壊すな。日中、ドアの鍵は内側からしかかからないだろ。窓は、部屋使うときは鍵をはずせって宮石に言っとけよ。俺も巡回してやる」

顧問は世話が焼けると言いながら、ため息をつく。

「ありがとう。それで、もし、男が入ってきたら、完膚なきまでに脅しておいてね」

「俺、責任重大だな」

苦笑いの顧問の前に正座し、頭をさげる。

「僕のかわりにハニィのこと、守ってください。どうかお願いします」

「いきなり低姿勢かよ」

彼女を残して過ごす1年、本当に心配なんだ。
おどけながらも本気でお願いしたい。

「…スリッパ舐めてほしい?」

「いらないよ。でも土産、忘れんなよ?」

「先生って最高にイイヤツだな」っと褒め称えて、僕は予鈴の響くなか、職員室を出た。

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