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僕ら× 1st.

第19章 雲の上 --Tk,R

「お前と彼女をかくまうことも考えてみたんだ……」

今日の雨に浸る俺に、小柴さんが藁を差しのべる。

「すぐに見つけられるよ」

「花野さんを監禁するなら可能かと思う……お前は死んだことになってるし」

そう、それは俺も幾度となく考えた。
彼女と離れずにいられる道。

伊織と同じ、見せかけ事故死は流石に怪しまれてしまう。
実際、柊兄はすでに疑っているだろう。

では、宮石家の説得……厳しいだろ。
彼女に甘い帆澄兄だって、甘いからこそ猛烈に反対するはずだ。
弟として信頼されているとはいえ、俺はまだ未成年。
その上、一切の連絡を断つ。
そんなこと、了承を貰えるわけがない。

拉致なら……。
血眼で捜索する宮石家とアル兄をかい潜って、彼女とふたり……罪の意識にさいなまれながら。

「でもそれだと花野は、家族と会えない。学校にも行けない。…夢を叶えられないっ」

青空の下で自由に笑えない。
そんな生活を彼女に強いたくない。

「それでも彼女は、お前と一緒に暮らす方を選ぶんじゃないか?」

小柴さん……やっぱり優しいんだな。
俺への慰めを忘れない。

期限つきなら俺だって、待っていてと今の彼女になら言える。
だけど。

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