テキストサイズ

僕ら× 1st.

第19章 雲の上 --Tk,R

***

さあ、今日が来た。
彼女と楽しくデートしていたはずの、高校最初の夏休みがもうすぐそこ。
"そんなこと考えるな"と思っても、到底無理な話。

時間がない。
小柴さんがアル兄たちを足止めしてるうちに早めに図書館へ。

ロビーで待っていると、午前中のうちに麦わら帽子の彼女が姿を見せた。

俺に気づくと、ニコッと笑ってくれる。

「俺、今日から海外に出ることになったから」

そう伝えると、彼女は瞳を曇らせる。

「あのっ、お名前教えてください」

彼女がこんな思いきったことを言うなんてと、びっくりした。

心奥では、伊織を諦めて俺を好きになったんじゃあ?なんて複雑な気分が押し寄せる。
自分から離れたのに、俺って身勝手だな。

「ははっ、自己紹介してなかったね。俺、世尾湊」

疑ってもいないのに、指紋なんて調べやしないだろう。
どっちにしろ伊織とは変えている。
加えてリースは褐色肌、湊に扮する時は黄白色のベールをかぶる。

俺が差し出した名刺を両手で受け取った彼女は、食い入るようにその紙を見つめ、嬉しそうに頬を染める。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ