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僕ら× 1st.

第19章 雲の上 --Tk,R

と、スマホが揺れだした。

タップすると、いきなり強気な孝明。

「リィ兄!もうっ、行くよっ?早く帰って来て!」

アル兄じゃなくてお前が邪魔するの?

伊織と同じ呼び方をされてるけど、同一人物とは思われないだろう。
やや驚いた表情の彼女を見守りながら、そのまま通話を切った。

「時間みたい」

「世尾さん、ご帰国はいつですか?」

少ししか会っていない俺に、好意を示してくれる彼女。

「……5年か10年くらい先かな」

キミの様子を見に時々、帰ってくるつもりではあるけど。

親父たちにまみえた後は、そう易々とキミに声をかけられない。
アル兄が更にキミに近づいているかもしれないし。
それに再度、人質要求されるわけにはいかない。

5年後、もうキミは大学生だね。
10年後、もう結婚してたりして?

何にせよ、恋人と仲良く水族館に通ってるんだろうな…。

「そうなんですか……旅のご無事をお祈りしてます」

「ありがとう。花野ちゃんも元気で。また会おうな」

また会えるのだろうか?
その時、俺のことを覚えていてくれる?

「はいっ!」

本当に、元気で。
本当にっ。

幸せになって、ね。

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