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僕ら× 1st.

第3章 2人の証 --Ior,Hzm

僕は、室内灯に透かして中身を確認する。
剃刀のたぐいは入ってなさそうだ…。

「開けないの?」

中身が気になる様子の彼女は封筒に釘付けで、僕が掲げたまま左右に封筒を揺らすと、頭を同じ方向に傾ける…おもしろっ…。
そのうちネコパンチ、出ないかな?

「僕に来るなら、果たし状だろ」

第一、色気のある手紙なんて貰ったことがないし。
小学生の時に、"宮石からはなれろ"ってきったない字の手紙を頂戴したことはあるけど。

「そうは見えないよ。お兄ちゃんが持ってたけど、表に大きく"果たし状"って書いてあったよ?」

「お兄ちゃん、何してんの…」

「ねぇ…」

帆澄兄って、やっぱり危ないよな……。

と、自分の手元を見つめる。
靴箱じゃなくて、何で他人目につく音楽室なんだ?
この封筒、ちょっと怖いが開けてみるか…。

封を開け、彼女から隠すように便箋を開く。
彼女は手紙を覗きこみはせずに、僕が目を走らせるさまを見つめている。

そこには、僕と仲良くなりたいと、生々しい表現で綴られていた。

……この手紙の主は、僕をからかっているのか?
彼女の前で、こんな手紙を読ませて……。

もし、他のヤツが興味本意で開けたら、僕はどうなってた……?
根も葉もない噂が広がるだろう…それが目的か?

好意か、敵意か。わかりかねる。

初めて貰うラブレターかもしれないのに僕は、アル兄がウザイと言った気持ちが少しわかった気がした。

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