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僕ら× 1st.

第3章 2人の証 --Ior,Hzm

僕が険しい表情をしていたせいか、彼女は僕をうかがうのをやめ、カバンを持ってドア付近の椅子にちょんと座った。

僕、彼女に告白しようと思ったんだけど、完全にタイミング逸したな。
でもつい先日、まだまだ早計とか思ってたのに…恐ろしいな、昂ってキスすることまで考えてさ……。

奇異な手紙のお陰で、次第に冷静になってくる。

危ない危ない。
今日は彼女の家で夕食を呼ばれてたんだった。
もう少しで気まずい食卓になるかもなとこだった……。

ふうっとため息をつき、彼女の隣に腰かける。

「男からだった……」

「じゃあ、ファンレターだ」

「うーん、そうなのかな」

カバンのなかに手紙を押しこみ、並んで駅に向かう。
同好会のある日だけは、僕が彼女を自宅まで送らせてもらっている。

日は沈み、西の空に夕焼けの残る帰り道。
隣を歩く彼女の横顔を時折見つめる。
"好きだよ"と口にできない想いを胸に、繰りかえしながら。

彼女の自宅では、少し遅れて帰宅した帆澄兄も加わって談笑する。
夕食をご馳走になり、今回も帰りは和波兄に送ってもらった。

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