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僕ら× 1st.

第3章 2人の証 --Ior,Hzm

***

蝉時雨が近くの森林で降りしきるなか、ついにこの日がやって来た。
通知票の脅威と、これから始まるバカンスへの期待が入りまじった1学期最終日の朝の学校。
僕は、今夕には空の上。

「これ、お守り」

めずらしく僕のいる教室に入ってきた彼女は、小さな薄茶色の紙包みを渡してくる。

「僕に?ありがとう」

ゴソッと開けると、なめした革と華奢な銀の鎖でできたブレスが入っていた。

「へぇ、カッコいい!」

「ついてる石がね、厄除けなんだって」

よく見ると、鎖の途中にサイズの違う小ぶりの石が2つ並んでついていた。
取りだしてさっそく、左手首に巻きつける。

「ありがとう。つけ心地いい!」

「何?あんたら、ホント仲良いねぇ。花野、お別れのチューでもしてやりなよ」

小津が隣で冷やかすも、無視。
一瞬驚いた顔をした彼女は、「ふふっ」と笑ってごまかした。

彼女が僕のことを案じてくれているのが、とても嬉しかった。
僕も彼女に渡すものがあったが、さすがにこの教室じゃ渡せないな。

彼氏ができないようにと、祈りを込めたお守りを。
彼女にとって、それは呪いかもしれないけど。

僕はポケットの上に手を当てて、小さな箱が入っているのを確認した。

「今日は一緒に帰ろ?タディ(和波兄)に迎え不要って伝えてよ?」

僕がそう言うと、彼女はコクンと小さくうなずいた。

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