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僕ら× 1st.

第20章 夏祭り --Hzm,Mkt,Ar,Kn

兄貴の部屋から出た俺は、リィが使っていた部屋を覗いてみる。
そこはカバーのかかったベッドが置いてあるだけ。

中学3年の星を見た夏に使ったっきり。

耳まで赤くしながら"高校生になったら……"と俺に話したリィを思い出す。

ヤツのこと。
本当にキスもしてないんだろうな。

花火に誘われたかシトシトと降りだした雨は、酸味を伴ってポロンポロンと地上に到達する。
やがて雲が先行くと、街灯の光を受けて金色に輝きながら。

なぁ、リィ。
ハニィに彼氏ができるかもしれないぞ?
それも、お前の兄貴だって……。

心変わりなんてウソなんだろ?

俺が窓の外を見ていると、兄貴が入ってきた。

「兄貴……」

「どうしようもない時は運に任せる。今できることを、すればいいんだ。……温泉でも行く?」

「俺は風呂入ったし、それに置いていくとハニィが寂しがるよ」

もう高校生になったんだ。
水着でも流石に一緒に入るのは、俺の下心がヤバイ。

「……残念だったな」

何がだ?

「俺には隠さなくていいよ。お前、頑張ってるよ。大学を海外にしたのも距離を置きたかったからだろ?」

もしかして。

「残念って何、が?」

「逆を言うと、どうあっても4きょうだいの絆は切れないよ」

知ってるんだな、俺の密かな…。

長男:兄貴は従兄、三男:リィは元より血の繋がりはない。
長女:ハニィと結婚できないのは、次男の俺だけ。

白峯に見せられた戸籍でも、宮石姓を名乗るのは俺と妹だけだった。
兄貴は実際は、高梁。

妹と結婚できないのは、この世の中で俺1人だけ。

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