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僕ら× 1st.

第21章 健闘 --Ar,Thk,Kn,Shu

***

2学期始め、羽賀が退いた音楽室に入ると、彼女がポロポロ泣いていて。
泣くのは俺の前でだけって約束したのに!(注:してない)

「花野ちゃん!どうしたの?」

重そうなダンボール箱を抱えている。

「あ、先パイ。すみませんっ」

「伊織君のっ、今までに使っていた楽譜とか出てきてっ」

また伊織か……。
いや、花野ちゃんを泣かせるのは伊織しかいねぇんだろうけどさ。

「涙、我慢しなくていいよ」

てか、その重いの置いたら?
大切そうに持つ箱を花野ちゃんから奪い、机に乗せる。

楽譜に伊織が書き記したチェックが見えるけど。
何のことかさっぱりわからない。

「すみませんっ。私っ、今日は弾けないっ」

崩れるように椅子に座り込む。

「そんなの気にするなよ」

彼女の短い髪に手を伸ばす。
しっとりサラッとして気持ちいい。
そのまま頭を撫でる。

「ね、先パイっ。伊織君は、どこに行っちゃったんでしょうか?」

彼女はグスグスした顔で俺を見上げた。

「ごめん、わからない」

「……私こそ、すみません。先パイも辛いのに、こんなこと言って」

俺が辛いのはそういう意味じゃねぇけどな。

「ううん。俺は聞きたいよ。何でも言ってほしい」

何であっても、花野ちゃんに頼られるのは俺でありたい。
その場所は確保できつつあるんじゃないかな。

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