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僕ら× 1st.

第3章 2人の証 --Ior,Hzm

「バースデープレゼント?」

「いや、ビバ・誕生日でもない日」

妹がときどき口ずさむ、不思議の国のお茶会の歌を思いだしながらごまかす。
「何じゃそれ?」と圭は呟くが、深く追及はしてこなかった。
妹の婚約者からのプレゼントに対抗して、なんて俺も言えない。

「帆澄の妹っていくつ?」

「12」

「何だ子どもか。俺の守備範囲外」

今は子どもだけど、いずれ大人になる。
兄の欲目だろうが、妹は将来、ぜったいにいい女になる。
性格だって、素直で明るくて控えめで家族思いで…言いだしたら終わらない。

「お前みたいな可愛くない弟、いらないよ」

たとえこの先、妹が圭の守備範囲に入っても、お前には惚れさせない。
お前みたい女癖の悪い男に任せられるかよ。
妹には、俺の息がかかったあいつがいるんだ。

「俺も、お前みたいな暴力兄貴いらね」

俺が足蹴にすると、圭も負けじと吐きすてた。

待ちあわせの彼女が来たようで。
圭と軽く拳をあわせて別れる。

さて、妹にいつ渡そう?
いきおいで買ったはいいものの、本当に何でもない日なので俺はためらっていた。
こないだ夏服を買ってあげたところだしなぁ。

図書館で妹と合流し、途中ジューサーバーで一息して帰宅する。

夕方遅くから近くの空手道場に顔を出す。
まだほかの連中が来ていなかったので蒸し暑いなか、壁ぎわで寝転んでいたら。

「兄ぃ、どーしたの?受験勉強のしすぎ?」

「違うって。女性問題だよね?」

…ああ、また生意気なヤツらが来たよ。
柊、当てるなよ…。

女性問題というか…妹はいずれ俺のもとから離れていくことが、何というかさ。

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