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僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

それからは学校祭準備期間となり、花野ちゃんとの音楽室デートはおあずけの日々。

最近アルは、気がつけばため息。
恋煩いも大概にしてほしい。

ドキドキするのに、だからこそつきあいたくないと言う彼女も彼女だけど、そこは複雑な心境があるんだろう。

高校最後の文化祭。
マスカレイドには今年も不参加。

一応声はかけたけど、グルーピーを気にしてか、花野ちゃんからのオッケーは得られなかったらしい。

「俺の何がダメなんだろ?」

昼ごはんを食べながら俺の横で呟く。

「お前がダメなんじゃなくて、伊織が良すぎたんじゃね?」

と言うと、「くくくっ」と笑いだした。

お前より伊織の方が気が回るのは明白。
それにあの別れ方。
花野ちゃんの中には伊織が深く刻まれているさ。

「花野ちゃんはさ、強力な磁石で伊織に引き寄せられてはいるけど、顔はお前の方を向いてると思うぞ?」

「磁石か…成程。俺がイオを超越したネオジム磁石になればいいんだな。または、自己減磁、温度減磁…設定が正体不明だからな…」

「……」

俺の例え話、今のお前と花野ちゃんの関係をわかりやすく表したんじゃねぇかと自画自賛しようと思ったのに、こいつが絡むだけで崩れていく。

何の設定?と尋ねそうになるけど、理解できないゲートが鮮やかに見えてきたから追求なんかするもんか。
正体不明はてめぇだろ!

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