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僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

その午後は午前中の続きで、体育館で黙々とドミノを並べる。

3年生総出で、ひとり500牌以上を組んでいく。
計3万個…何度も誰かが途中で倒し、呆然としながら。

それでも全てが倒れないようにと空いていた隙間を埋めていくと、15時を回る頃にはトリッキーな立体ドミノができあがった。

「壮観ですねぇ」

手伝いに来ていた依田が「ふうっ」と息を吐く。

「花野ちゃん来てる?」

もうすぐドミノタッチだ。
一瞬の傑作だから、俺としても見てほしいな。

「うん、2階」

アル、俺、依田の3人が目を向けると、マコちゃんと2人で手摺を掴んでいる彼女と目があった。

アルが手を振ると、キョロキョロしながら胸の前で小さく手を開いて微妙に動かした。

体育館全体を見回すと、同じく2階で彼女を刺すように睨み付ける一群を発見する。

人間の一団ってのは、強い意見に巻かれやすいからな。
あの中には、アルを応援したいって思ってるコもいるだろうに。

でも、あいつらに面と向かって注意したって火に油。
まあ、花野ちゃんには俺らがついてるし…。

視線の先をドミノに変えた花野ちゃんを、アルは見つめる。

俺は、依田に話しかけた。

「お前、花野ちゃんと同じクラスだよな?」

「はい」

「何かあった時さ、俺にすぐ連絡くれる?」

とスマホを掲げる。

「いいですよ」

夏休みに窮地を救われたこともあってか、依田は素直に連絡交換に応じた。

と、2階からキャーッ!と言う声があがる。
何事かと顔をあげると、アルに手を振られたグルーピーたちの歓声だった。

次いでアルは、再び花野ちゃんに手を振る。

戸惑う花野ちゃんの手をマコちゃんが掴んで、思いっきり振った。

最初はこわばっていた花野ちゃんも、アルにニコッと微笑んだ。

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