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僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

ようやく女のコたちから解放されたアルだけど、体育館の片隅に座り込み、設計者同士でもう動かないドミノを眺めだす。

俺は外の空気を吸いに観客に混じって行く。
すると、依田もついてきた。

誰もいない体育館横手に周り、伊織との最後の接触を教えてくれる。

「どうしても腑に落ちないんです。別れても、あいつは宮石のこと見てました。遠くの宮石をつかんで、ポケットに入れて…」

依田は伊織がしたであろう動作を再現した。

「ま、秘密なんて誰にでもあるだろ」

俺も腑に落ちねぇ。
でも、それ以上は不用意に探れねぇんだ。

「お前は伊織に信用されてる。それが伊織の本心なんじゃねぇか?」

「宮石が嫌で別れたんじゃないんですよね?」

「てゆうか、伊織は花野ちゃんを好きだから別れたんだよ。俺はそう思う」

好きだからこそ。

「好きだから別れる…?」

花野ちゃんとずっと一緒にいたかっただろうな。
高校、大学とずっと一緒に……。

「伊織は俺に、"解決したら連絡する"って言いました。"それまで俺のこと、覚えててくれ"と、なのに……」

なのに、あの事故だよな。

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