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僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

「…じゃ、俺のにちょっと入れて」

こいつ、間接キスを狙ってるな…。

「ちょっとじゃ温度、変わりませんよ?」

大丈夫さ、温度のことはもうこいつの頭にねぇから。

「そんなの気にしねぇよ」

「えっ?」と花野ちゃんは目をぱちくりする。

ぐっとアルが差し出すコップに自分の缶を傾けようとするも、「あっ!」と声をあげて手を引っ込める。

「すみません、先パイ。私、これ口をつけてました」

やっぱ気づいてなかったんだな。

「そんなのいいから温めて?」

「え、いえ…ダメです」

アル、気持ちはわかるけど、言ってること目茶苦茶。
笑う俺にアルもペロッと舌を出す。

3人でくすぐったくお茶をしていると、少し開いた窓から校庭の音楽が聞こえだす。

マスカレイド、始まったな。

俺はぐっとコーヒーを飲み干し、コップをアルの前に置く。

「っさ、俺は可愛いコとダンスしてこよ。花野ちゃん、コップありがと」

「こちらこそ、ごちそうさまでした!」

お礼した花野ちゃんの頭を撫でたくなったけど、アルが口を結んで首を小さく振るので止めておいた。

独占欲の塊め。
俺にとって花野ちゃんはそんなんじゃなくて、マジで妹みたいに可愛い存在なんだって。

お前や伊織のことがなくたって、トリニトロ…とか言い出す女のコを口説こうなんざ思わねぇよ。

代わりにアルの頭を撫で回して、音楽室をあとにした。

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