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僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

帰宅してリビングに入るなり、ガンっとテーブルに脚を乱暴に乗せて座るアル。

もう、ほぼ両想いだと思ってたのにな…。

そこへ、今年から大学に通っている俺の姉2人が帰って来た。
千夏さんは、アルを見るなりニヤっとして突っかかる。

「行儀悪いね、そこの伊達男。またフラレたの?クリスマスも近いのに」

むっつりと目を閉じるアル。
マジに不機嫌なアルに、それを楽しむ千夏さん…。
やりあっても仕方ないので、俺は話題を変えた。

「おかえり。調子ど?」

「うん。今、ヒナキさんのお店でバイトしてる」

今日は買い物をしてきたらしく、可愛いショッパーを2人とも手に持っている。

「それは良かったな。あそこは勉強になるだろ」

「うん。ただお酒を注いでご機嫌とったらいいと思ってたけど、全然違って。目からウロコの毎日」

「おお、魚だったか。魚に春がサワラで、魚夏で…ブリの幼魚ワカシって言うんだと」

テーブルに脚を上げたままのアルが、わざわざスマホで検索をかけて読み上げる。

「それなら、あんたは鮪でしょ?相変わらず彼女1匹も釣れないんだ、かわいそうなマグロ君」

それを聞いた千春さんも笑いだす。

やめとけ、アル。
お前は、口では勝てねぇよ…。

「今日は何を買ったの?服?」

またもや話題を変えた俺は、姉2人の視界からアルを消した。

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