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僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

年が明け、殺気立つ教室。
自習なのでと遊びに来た柊は、誰かが落とした単語帳を覗いている。

柊が目指すのは社会心理系。
その学部の指定する科目には、すでにA判定を出しているので、面接をものともしない柊はもう余裕の表情。

と、あることに気づいた俺は、ポツっと呟いた。

「経済学部ってもしかすると文系だよな?…俺って理系だった…」

俺が所有しているA判定は、主に理系科目。
同じ大学の経済学部が指定する科目には、文系が2科目も足らないことに今更気がついた。

俺は昨年のうちに受験が終わってしまったから、興味がわいただけなんだけど。

B判定じゃダメだろうなぁ。
せめてAS判定とらないと……。

と、頭上から降り注ぐ声。

「マヌケ」

「…お前のその台詞、俺の脳裏に焼きついてるみたいでさ、ちょくちょく出てくるんだ」

苦々しく柊を見据えるが、そんな俺の小言はスルーされる。

「ははっ。でもさ、アル。経済学って開けてみれば理系色が濃いって伊織が言ってたよ」

「そうなのか?」

文系か理系か、白黒はっきりつけようとすること自体がナンセンス、か。

「いや、俺は知らん」

「とにかくうちの経済学部が求める試験科目は文系の傾向がある」

「ま、やめとけよ。伊織もさ、2学部入りたいのは資格の取得とコネクションを広げたいだけみたいだったし。経済と経営はブレーン連中に任せとけよ」

「そうだな」

経済でもとったら花野ちゃんに尊敬されるかなぁとかちょこっと思ったけど、餅は餅屋だな。

そこへ、柊のスマホが震え出した。

ん?着信?

バイブにしているとはいえ、滅多に授業中着信なんてないはず。
親父から緊急か?

まさか、伊織が見つかったのか?

「依田だ…」

え?
俺はスマホをタップする柊を見守った。

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