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僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

その夜、俺たちは付近のホテルに宿泊した。
静かなツインルーム。

シャワーを終えた俺がベットに入ると、隣のベットで寝そべるアルが「おつかれ」と話しかけてきた。

「お前の方が疲れたろ。花野ちゃんが遭難って聞いて、蒼白だったぞ?」

スマホを操作する手も震えていたし。

「伊織が花野ちゃんを迎えに来て、俺を置いて2人で一緒に行っちゃうんじゃねぇかと思った…。俺ってオーバーだな」

アルの言に対して"伊織は死んでなんかいねぇ"と言いたいけれど。

「お前がそんなメルヘンなこと言うか?それに伊織なら、そんなことしねぇよ。連れていかずに花野ちゃんを助けるよ」

「そうか…そうだな」

くるっとひっくり返った男は、俺をチラと見てジョークを叩き始める。

「いいなぁ、和波さん。花野ちゃんと同じ部屋で寝るんだなぁ…。俺の横なんて、ギガント・ピテクスなのに」

そう呼ばれるのは今に始まったこっちゃねぇけど、何で俺があんな毛むくじゃらなんだよ?
俺は二足歩行してるだろっ!

「ふん。妹でいいのか?」

「やだ」

「明日も会えるんだ。しょーもないこと言ってねぇで寝ろ…」

生ける化石と思うなら、もっと丁重に扱えってんだ。

「ああ、おやすみ。柊三郎」

それは、花野ちゃん担当医。
よくチェックしてやがる……。

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