テキストサイズ

僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

夜間、予想通り熱を出した花野ちゃんだけど、翌日にはそこそこ下がって退院となった。

ジェット機内、アルはいそいそと花野ちゃんの隣に座る。
俺は副操縦席にかけ、和波さんの所作を見守った。
いつか、俺もジェットを運転したい。

離陸後、後ろから2人の声が聞こえてくる。

「花野ちゃん、大丈夫?」

「はい。もう、着陸までは」

「それ、抱き枕?」

「はいっ。可愛いでしょ?"でめくじらさん"って名前ですっ」

「へぇ、名前まであるんだ。いつも使ってるの?」

「そうです。おうちで寝る時はいつも一緒です」

今朝から病室内にデンっと横たわっていたもんな…でかいクジラが。
和波さん、火急の中で持ってきたんだ…。

「ふうん…」

羨ましげにクジラを見るアルの顔が目に浮かぶ。

「先パイのはどんなですか?」

「い?俺は抱き枕なんて使わねぇよ…」

「そうなんですか?」

「うん、使わない…俺が抱……いや、何でもねぇ」

俺が抱きたいのは花野ちゃん、とかまた考えてんだろうな。
思ったことを口に出さなくて正解だよ。

隣の和波さんも「ふっ」と笑った。
アル、お前わかりやすすぎ…。

「えっとこの画面はね、高度と中継地点を…」

と、俺は和波さんの説明に集中した。

数時間のうちに花野ちゃんの家に到着したアルと俺は、昼から登校し、担任に念仏を吐かれた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ