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僕ら× 1st.

第23章 タリオ --Shu,Khs,Ar

***

その2日後、花野ちゃんの家に見舞いに行った帰り。
同じく見舞いに来ていた3名と近くの喫茶店へ。
俺たち5人は、それぞれ好みの飲み物を注文する。

アルと俺、晄志とマコちゃん。
それに、今回の遭難者の1人…森ちゃん。

「アル兄、柊兄。5人に危険な西回りルートを教えたのはあの2人だったよ」

と赤い瞳の晄志が、冷静を心がけながらまくりあげる。
すると、森ちゃんが説明してくれる。

「アイサとサユミに声をかけられたんだけど、途中でルートがおかしいのに気づいて。まだ滑れる部類の2人が助けを呼びにいこうとしたんです。道を戻ろうとして滑落して、それで花野ちゃんにもぶつかって。でも全員、骨折だけで済んでよかったです」

「ホントだよな」

うちひとりは開放骨折だから、現場は流血の惨事だったろうけどな。
幸い重篤な感染症もなく、切断することもなく生命にも別状はなかったけれど。

「ブレスレットはですね。あの人たち、ここの水で手を洗うなら、温泉の成分で錆びるから金属外した方がいいよって花野ちゃんに言って…」

「やっぱ、宮石から預かってほしいって言ったっていうのはウソか?」

晄志の問いに森ちゃんが答える。

「何それ?私が持っててあげるとかサユミが言って、そのあと誰かに呼ばれて消えたのよ」

花野ちゃんから預かるふりして搾取したとは言えねぇだろうな。
でも、ただ単に"返すのを忘れてた"と言えばよかったんじゃねぇのか?
尋ねられた時点で拾ったことにしてしまったからあとに引けなかったのかもしれないが、あまりにも安易。

……証人は帰ってこないと思っていたか、重大なことをした自覚がなかったのか。

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