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僕ら× 1st.

第23章 タリオ --Shu,Khs,Ar

~依田晄志side~

放課後、どこかからマザーグースの歌が聞こえる。
誰が歌ってるんだ?

~誰が殺したの?コマドリを
それは私とスズメは答える
私の弓で、私の矢羽で
私が殺した、コマドリを~

歌詞は続いていく。
コマドリの葬式で、動物たちが何を担当するか名乗りをあげていく。

悲しむ空に鐘が鳴り響く。

……スズメは葬式の間中、どこで何をしていたんだろう?

中等部3年晩秋。
部活から引退した俺たちは、試験勉強に勤しむはずもなく、のんびりと過ごす。
流れる歌詞を耳に入れ、隣で本を開く男に質問する。

「どうして誰もスズメを責めないんだ?」

出だしで早速自白したスズメ。
だけどそれきり出てこない。

殺されたコマドリが好かれていなかったとは思えない。
なのに歌は死体の発見から葬式の進行のみで、誰も仇討ちを誓ったりはしない。
それならコマドリがただ亡くなったという歌詞にすればいいのに。

「お前、それ本当に知りたい?」

本に栞を挟んで伊織は不敵に微笑む。

「え?いや…」

「研究したけりゃその当時の史実や風習からそれぞれ何を指しているのか調べてみたら?成果が得られるかはわからないけど」

「伊織なら知ってるかと思って」

ただの雑談とごまかす俺を横目に、「聞きたいなら話すけど」と伊織は俺に促されながら持論を30分以上広げた。

そして一息つくと、言う。

「…なあ。こんな話、面白い?俺、普段は頭の中で色々に堅苦しく考えるけど、それを他人に話したりなんてしないよ?こいつ、近寄りがたいって思われるのわかってるから」

伊織は渋い顔で俺を窺う。

「え?俺は楽しいよ?復讐反対派の思惑なんて、俺は思いつかないし。まして復讐が健全か不健全かなんて」

伊織の話は真剣に興味深いけどな。

「そう言っても俺は、大切な人を傷つけられて黙ってはいないけどな。ま、タリオだよ」

怖いことを当然のように言ったぞ……。

「同害の報復?」

「ああ。またはそれ以上の致命的破壊」

……トーマ君、無事でよかったな。

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