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僕ら× 1st.

第23章 タリオ --Shu,Khs,Ar

と、駐車場付近で2人を見失う。
どこかクルマの影に?
でも俺は、アル兄の邪魔をする気はないんだけど。

キョロキョロしていると「おい」と声をかけられた。

「花野ちゃんとアルなら、この中だよ」

柊兄は後ろのクルマを指す。

「え?クルマ?誰の?」

「俺らの。俺ら、クルマ通学してたの。あ、秘密な」

秘密っても、今日で卒業するんだろうけど。
と、フロントからクルマを覗くが、今日は太陽がぼやけてよく見えない…。

「大丈夫、襲ってなんかねぇよ。したら、クルマが揺れるだろ?」

その時、サスペンションが軽く軋み、柊兄と俺は見えない車内を睨む。

「……大丈夫だろ」

「…何、話してんの?」

「そりゃ当然、口説いてんじゃね?割り込むか?」

「いや、いい…」

暫く俺たち2人は、光冠が滲む空をぼーっと眺めた。

そのうちに柊兄の首が動く。

「晄志、乗れ。もっちーが来る」

柊兄がドアを開け、助手席から運転席に身を移すので、咄嗟に俺も上がり込んでドアを閉めた。

バンっと音がしたけど、頭の先もまだ見えてこない望月には、このクルマだとは気づかれなかっただろう。
柊兄の感知力に感心しながら「はぁっ」、と一息吐くと、後ろから鬱陶しそうな声がした。

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