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僕ら× 1st.

第23章 タリオ --Shu,Khs,Ar

もっちーと晄志に追われて入った2人きりの車内。
音楽室のそれとは密室レベルが違って、その近さにドキドキしてしまう。

落ち着かせようと大きく息をして、隣の彼女を見る。
困ったような呆れたような表情の彼女と目が合った。

「本当は、俺のこと迷惑とか思ってる?」

思ってない方がおかしいよな。
殺されかけたんだから。
あ、花野ちゃんは詳細を知らねぇか?
でも、俺のせいで窮屈な思いをさせてしまっている。

「そんなそんなっ。私、吉坂先パイがいなきゃ、ここまで立ち直れてなかった!いっぱい助けてもらってるし。迷惑なんて時々しか思ってないです。ありがとうございます」

"時々しか"?
その素直な物言いに苦笑する。

と、クルマの外、俺たちに背を向けて立っていた柊が動く。
晄志が来たか…。

注意を向けると、2人の声が聞こえてくる。

「大丈夫、襲ってなんかねぇよ」

んなこと俺たちに聞こえるように言うなっての。

保温バッグから缶を取り出し、花野ちゃんに渡すと、外の言葉を気にしていないと言いたげに明るく礼を返される。

「先パイ、大学生になっても頑張ってくださいね!」

俺のコーヒー缶と、彼女の紅茶缶が触れる。

「おう。キャンパス案内するよ」

無言ではにかむ彼女を見ながら、喉を潤す。

少し待つけど、返事はない。
もう、俺には会いたくねぇのかな……。

ため息をつきそうになり、無理矢理緩い途切れ吐息に変換させて、缶を包む彼女の指先を苦し紛れに見つめた。

もしかして、今日で最後にしたいと思ってる?
そんなこと聞いたら、"その通り"って言われたら俺っ。
俺、それでもまだ諦められねぇよ。

なぁ、ドキドキするからつきあえないって言ったよな?
もうあの感情は、通り過ぎたのか?

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