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僕ら× 1st.

第23章 タリオ --Shu,Khs,Ar

そんなこんなで、今は彼女の家。
玄関で出迎えた和波さんに、彼女の鞄を渡そうというところ。

「入って?花野は今、部屋にいると思うから、呼んでくるよ」

「あの、和波さんに相談があります」

「え?」

通された客室で、俺は兄貴を引き留めて説明する。

「すみません。心配で、花野ちゃんに発信器をつけていました」

脇で聞いていた晄志の方が驚いた表情をする。
柊も、"お前、それ言うの?"って顔。

「発信器?……花野は知らないの?」

やや曇り顔で鞄を受けとる和波さんに、俺はスマホの追跡モニターを見せた。

「はい、きっと」

和波さんは見つめる。

この告白で、兄貴に敬遠されることになるのだろうか。
自分の身内に発信器、喜ばしくはないだろう。
でも、好きだからこそ……理解してほしい。

そしてこれから先、和波さんの協力がほしい。
こんなこと花野ちゃんに言えないから、保護者として和波さんに知っていてもらいたい。

暫く気まずい沈黙が流れた。

「あのっ、和波さん。でも、そのお陰で俺たち、あの時助かったんです。だよね?アル兄」

夏のバラックでの出来事を読み解いた晄志が、説明してくれる。

「ああ、それでだったんだ。吉坂君、本條君。あの件ではどうもありがとう」

「で、相談って?」と優しく尋ねられた。
晄志を連れてきてよかった。

「その花野ちゃんの鞄の中に発信器が入っていると思うのですが、何に取り付けられているのか確認したいんです」

花野ちゃんの鞄を手にした時から、いや、スキーに行く前から気になっていたんだ。

「……取り付けたのは誰?吉坂君じゃないの?」

「…伊織です。俺は、せっかくなら肌身離さず持っていてほしい。鞄に入れたまま離れたら意味がない。俺から渡してもいいのですが、それがあいつの意思なら。そろそろ1年越えるので異常ないかも心配ですし」

「伊織、か…。吉坂君、説明が悪いね。俺、キミをはたきだそうかと考えちゃったよ」

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