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僕ら× 1st.

第23章 タリオ --Shu,Khs,Ar

くすんだオレンジの帆布の鞄。
その色褪せた感じが何ともいい雰囲気で。
小花のコサージュが女のコらしくて。

花野ちゃんって、こういう素朴な風合いのが好きなのかな?
お気に入りを末永く使い込むタイプ?

あの紐のちぎれたショルダーもくっつけようとしていたもんな。
金具だけなら俺でも直せたけど、鞄自体破れてたからなぁ…。

"俺が新しいの買ってやるよ"と言ったら、悲しそうに首を横に振られて、伊織からの贈り物だったのかと、それ以上、口を挟めなかった。

と、和波さんが花野ちゃんの手提げ鞄を椅子の上に置いて、俺に微笑む。

「花野を呼んでくるよ……。これ、置いといても?」

「大丈夫、開けません」

開けるなら、これまでにこっそり開けられたんだから。
なのに晄志は、自分が保護者であるかのように口を出す。

「俺が見張ってます」

「あ?俺が信用ならねぇってのか?」

「さっきクルマの中でのアル兄を知ってるから信用なんてできない」

「はあ?俺が何したよ?」

キスしたいのを精一杯我慢したんだぞ?
俺は、何もできなかったんだぞ?

だけど、晄志は暴露する。

「宮石の座ったあとのシート、ニヤケながら撫で回してたじゃないか!」

「っお前、俺を変態みたいに言うなよ!」

晄志の野郎、花野ちゃんの兄貴に聞かれたじゃねぇか。
やっぱ連れてくんじゃなかったか。

クスクス笑いながら和波さんは部屋を出ていこうとドアを開けた。

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