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僕ら× 1st.

第24章 グレートホール --Thk,Ar,Tk

~羽賀桃湖side~

この春、晴れて大学生になった。
私はサークル選びに疲れて、新しく設置された高校音楽室で花野を待つ。
去年まで使っていた音楽室は倉庫になったから。

したら、やっぱりやって来よったこいつ。
同グループの大学は、すぐそこやもんなぁ。

心臓に毛が生えた朴念仁と2人なんてと、はぁっと大きくため息をつく。

すると鬱陶しそうに私を見やり、ドスッと私の近くの椅子に腰を下ろしてきた。

「んだよ?クソでも漏らしたような顔しやがって」

……は?

「吉坂。あんたって、めっちゃ口悪っ!」

それが思い詰めた表情の女子にかける言葉?

「じゃ、言いかた変える。羽賀、ケツにンコついてんの?」

花野の前では幾分か上品ぶってるくせに。
滅多に会わない女子に対して、酷すぎるんとちゃう?

花野にフラレ続きなのは、ちょっぴり可哀想に思うけど。
あんたの追っかけにいじめられたんだもの、そりゃ引くわ。

「変っわんないわよ」

まぁ、片寄ったボキャブラリーの中で私を慰める気なのは読み取れるけど。
こういう時は、"どうしたの?"だけでよくない?

…こいつにでも話してみるか。
花野に言ったところで、まともに答えられるとも思えないし。

と、その前に…。

「あんた、もうちょっと様子を見てあげなよ。花野はまだ失恋から立ち直ってないのよ」

「でも、俺といた方が立ち直りやすいと思わね?もう花野ちゃんは"ほぼ俺"だと思うんだよな」

"ほぼ俺"って。
…でもまあ、私もそう思うわよ?
次に花野がつきあうのはあんただろうって。

「だけど82%と見せかけて、18%が台頭してくることだってあるんだよな」

どういうデータよ?それは。

「焦んなくても、花野には速水以外に仲良い男なんていないでしょ?」

「いるよ、バカ」

「何であんたにバカ呼ばわりされなくちゃなんないのよ?」

それには返さず吉坂は黙り始めた。
"バカ"で終わられた私は、ムシャクシャして仕方がなくなる。

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