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僕ら× 1st.

第24章 グレートホール --Thk,Ar,Tk

音楽室に私がいるのを見つけた花野は、ニコォと笑顔で入ってきた。
あ、もう足も治ったんやね!

「桃湖、桃湖!」と駆け寄るのを、吉坂がつかまえ阻止する。

「花野ちゃん。こいつと喋るのは俺とキスしてからだろ?」

何それ?

「そんな約束してないもん」

吉坂の前で足を止めた花野は、呟くように話す。

「俺、キスし損なったこと忘れられねぇ」

キスし損なった?
どんなシチュエイションよ?

「あのー、私たちいるんですけど?」

本條はスマホと遊びだしたけど、私はどうすりゃいいのよ?
花野だって私たちの前で口説かれるの、嫌でしょ?

そんな私たちの意見を無視して吉坂は続ける。

「花野ちゃん。俺、スーツ着てなきゃダメ?」

スーツ?
ああ、やから今日はオシャレにベストなんて羽織ってるの。

「そゆんじゃなくて」

花野の首もとで光るネックレスに目をやる。
去年後半は外していたのに、また付けるようになったのね。
速水がこのコは"俺の彼女"って主張してるみたい。

「学校離れると連絡取りづらいから、メアド交換しよ?いいだろ?」

後ろのポケットからスマホを抜いた吉坂は、嬉しそうにいそいそとタップ始めた。

花野は戸惑いながらも鞄からスマホを取りだす。

「今更そこ?」

この男、手が早いのか遅いのかわからない。
速水に遠慮してたんやろうけど、もういなくなってから1年以上経つのに。

机の上に座って気のない素振りだった本條も、苦笑いで吉坂を見ていた。

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