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僕ら× 1st.

第24章 グレートホール --Thk,Ar,Tk

「はいはい、ごめんね。これ、さっきもろてんけど、2人で食べな?私らもういただいてんか」

その女性からお菓子の包みを渡された。
柊なら、知らない人間から食べ物を貰うなんてと、すぐに捨てるんだろうな。

「え、あ、ありがとうございます」

手のひらにコロンと乗るそれは、魚の焼型を押したタマゴケーキの様子。

混雑界隈に柊の姿を探すと、ヤツは"オッケー"と目を軽く閉じた。
館内の商品か…。

「ほら、彼女も…何やら真剣やな?」

女性は俺の隣から彼女を窺う。

「はぁ、水族館大好きなもんで…」

当の花野ちゃんはパンフに載ったタイムテーブルと腕時計をじっと見ている。

ホント、水族館が大好きなんだなぁ。
水面が波打つ様子や、泡の動きも見ていて飽きないと言う彼女は、何度も足を止めてそれらにも見いる。
そして俺に話しかけてくれるんだ。

「あ、あのコ、侑生君に少し似てない?」

俺に似た魚?……と覗くも、どっこも似てねぇ。

「ほらあの流線型に筋肉質なとこ。侑生君は回遊魚だねー」

褒められているのかよくわからないけど、ニコニコして言うからにはいいことなんだろう。

夜行性ゾーンでは、のっそりと出てきたオオサンショウウオに、俺のことを彼氏だと紹介してくれた……。

そのちっさい目で見えてるのかよ?
とは思ったが、「よろしくお願いします」と挨拶しておいた。

もしかしたら花野ちゃんのお父さんの生まれ変わりかもしれないし。
いや、絶対に違うとは思うけど。

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