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僕ら× 1st.

第24章 グレートホール --Thk,Ar,Tk

18時前、彼女が手を振りながら自宅のドアに消えるのを確認して、通りを戻る。

もっと一緒にいたかったな…。
キス、しちゃったな……。

あの表情、めっちゃそそる…。

それに、あの感触。
奥まで沈んでいきそうな柔らかさ…。

そこで、脇から柊がスッと出て来て早速喋りだす。

「セイウチショー、よかったな」

花野ちゃんとの甘いシーンが、たちまち磯臭たっぷりのデップリ海獣に切り替えられる。

「あぁ。…けど、もうお前、ついてくるなよ」

ため息で見渡す若緑の街路樹は高くそびえ、犬を連れて散歩する人が2~3人、その幹に立ち寄っていた。

「そうはいかないよ。お前に何かあったら親父に殺される」

「大丈夫だよ」

花野ちゃんは犬派かな猫派かな?と思ったところで、違う違うと自分に突っ込む。
海獣派だった…。

花野ちゃん、全体的にはラッコにも似てるかも…。
あの貝を割る姿、器用なのか不器用なのかって手つきも花野ちゃんっぽいよな。
可愛いー。

「油断は命取りだ。夜エリアなんてよく平気で入れるよ。至近距離でナイフ出されても気づけねぇだろ?」

「殺気でわかるよ。暇だろ?」

まさか両生類と会話するとは思わなかったな。

"この鞄もね、買って貰ったの"と、くるっと背を向けて円らな瞳に見せていた。

その、はしゃぎっぷりが嬉しかった。
彼女がすごく喜んでくれているのが伝わってきた。

「わかる?その自信は根拠ねぇ。お前、花野ちゃんしか見てねぇじゃねぇか。それに、そう暇でもないぜ?人間観察、面白れぇ」

「俺のことは観察しなくていいから」

「お前が一番面白いんだよ」

ああっ!
悪いけど、こいついると余韻に浸れねぇ!

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