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僕ら× 1st.

第24章 グレートホール --Thk,Ar,Tk

~小柴孝明side~

夏休みの間は帰国して父さんの仕事を手伝う。
リィ兄はこちらに着くと、相変わらず図書館通い。
これから出掛けようとするリィ兄に父さんは声をかける。

「100日」

何のこと?
赤ちゃんがいるわけでもないだろうし。

「…そっか、よかったな」

口を結んだままリィ兄は笑う。

「本ばっか読んでないでお前も遊べよ?」

「適度にね。じゃ、いってきます」

物言いたげな表情で父さんはリィ兄を見送る。
そして、俺に尋ねてくる。

「…なぁ、孝明。あいつ、向こうでどうだった?」

「リィ兄?真面目に勉強してたよ?」

「あいつは不真面目を勉強した方がいいんじゃないかな…。いつか壊れないか心配なんだ」

不真面目を勉強?
面白いことを言うなぁ。

「遊びはしたよ?ボーリングとかカラオケとか」

「女のコとは?」

そういう遊び?

「それはない。リィ兄ってわりとモテるのに興味なさそう。でも、父さん。彼女を作っちゃダメだって前に言っただろ?」

時々、胸ポケに入れてある名刺ケースを開いて微笑んでた。
リィ兄の2D彼女は見せてもらったことはないけど。

もしかして、そこに入っているのは片想いの女のコの写真じゃない?と、俺は思っている。

そんなリィ兄が不真面目に女のコと遊ぶなんて、想像できないし。

「"特定の彼女"と言ったんだ。大切じゃない彼女なら何人作ってもかまわん。お前もいないの?」

「いないよ。大切じゃない彼女なんて彼女じゃないよ。父さんにはいるの?そんな女」

「いるよ?無数に」

「げ、大人って……」

父さんは目を細めて俺の頭を撫でた。
ああ、ここはウソなんだろな…。

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