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僕ら× 1st.

第24章 グレートホール --Thk,Ar,Tk

ある夏の日、昼から自転車で出掛けたリィ兄は、陽が沈んでもなかなか帰ってこない。

「リィ兄まだですか?」

夕飯は食べるからとっといてと言われていたのに。
リィ兄の机に置いたプレートは手付かず。

「海に星を観にだろ、ほっとけ」

「海?星?」

そういや、海洋生物や天気にもやけに詳しかったな。
剣道に考古学に薬学に音楽に生物に天体観察?
現在も経済と経営の大学に通学中。
いったいどこまで広がってるんだ?

学問が趣味のような。
こんな男がいるんだと、俺以上がこんな傍にいるんだと大海を垣間見る。

リィ兄が帰って来たのは未明。
雨が降ったわけでもないのに、頭から濡れている。
海で星って、海中でスターフィッシュってこと?
まさか。

「お前、夏だからって風邪ひくぞ?」

3時過ぎに投函された新聞をめくる父さんが、「風呂わいてる」と付け足した。

「ありがと」

うつむきがちに前を素通りする兄貴に、俺は何も言えなかった。
全身に悲しみを背負っていたから。

星を観に行ったのに、どうしてあんな姿で帰ってくるんだ?
頭に海藻や軟体動物をかぶっていたらお笑いだったけど、さ。

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