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僕ら× 1st.

第25章 in WL --Shu,R

***

長期休暇を終えて、孝明はリースと海外に戻った。
静かになったリビングでは有名古典映画をつけて、アルが思索にふけっている。
本日日中に大学で、学祭執行部を務める高校空手部当時の先パイから出し物の依頼があったから。

「怪盗紳士みたいなカッコしてやってよ。お前の可愛い彼女を助手にしてくれたらギャラリー倍増だし」

「気に入らねぇ」

アルセーヌ・ルパンとクラリスは花野ちゃんと一緒に映画で見たよな。
美人薄命クラリスは花野ちゃんに当てたくねぇか。

「え?似合うぜ?絶対に女子から悲鳴があがる」

先パイ、アルの扱い方を把握してねぇな。
俺は口を挟む。

「ノッポさんとゴンタ君でいいんじゃね?」

それは、最近訪問した先で子どもが熱心に見入っていた工作番組のコンビ。
花野ちゃんとゴンタ君のどんぐり瞳って似てる気がするなぁ。

「ナレーションはお前か?」

いや、やる気かよ?
で、知ってんのかよ?

前振りのつもりだったんだよ…。
俺は2人が演じるなら絶対これだと思うんだよなと、おすすめペアを擁立する。

「じゃ、マッドハッターとアリス?」

「アリス……」

アルが呟き、先パイが推す。

「それは似合いそうだな」

アルの口元がゆるゆると。

「それでいこう!近々、宮石ちゃん連れて来いよ?採寸するから」

「採寸?」

「衣装作るから」

「そんなの世間一般のサイズでいいだろ?」

「せめて、ブラのサイズ教えろよ?」

アルは無言で威嚇した。

「18禁アリスは嫌?できた衣装はプレゼントするのに?」

一瞬の迷いがあったが、アルは頭を振る。

「花野は俺だけんだよ。どうしてもってなら俺は降りる」

「わかったよ」と先パイは息を吐き、俺に顔を向ける。

「柊はチェシャ猫で?」

誰があんな歯並びのいい猫になるかっての。

「俺は裏方だよ。補佐がほしいなら連れてくる」

不特定多数が入り乱れる学校祭なんて、神経張り巡らさなきゃ、護衛がすたる。
大輔と共に不審者がアルに近づかないようにしないと。

補佐は晄志とか、あのギター坊主とか。

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