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僕ら× 1st.

第25章 in WL --Shu,R

すぐにぱっと舞台が明るくなり、そろったキャストが深々とお辞儀する。

?終わったのか?

トランプたちが一列ずつポーズをとりながら、舞台から左右に流れていく。
次いでハートの女王やクロッケーに駆り出された動物どもがはけていくと、そこはハッターとアリス、ウサギにネズミの4人になった。

かの話をほとんど知らない俺は、とりあえず無事に終わったことに安堵の息を漏らした。

花の格好をしたダンサーが袖からやって来て、4人を取り囲む。

あれ?
この花ってさっきのトランプたちだよな。
先程はハートの一兵卒だった友人が、楽し気にターンしていた。

花が竜巻のように通り過ぎたあとには不思議の国の住人も姿を消し、ステージにはハッターの帽子を手にしたアリスのみに。

また?

パチンと音がした次の瞬間、上から黒い幕が落ちてきたかと思ったら、衣装を解いたアルがさっと現れた。

あの後ろのカーテン、切れ目があるのか。

ああもう……不思議の国のアリス、怖ぇ。

ハッターは、アリスが持つ帽子を台に置き、口を開く。

「In this Style 10/6(この型の帽子は10シリング6ペンス)」

え?
何、この不思議な低音…。
アルの声じゃねぇ。

誰かの声をアルにかぶせたのか?

2人が観客席に頭を下げるうちに、左右の幕をウサギとネズミが引き、同時にどんちょう(緞帳)がスルスルと降りてくる。
これで本当に終わりだな。

俺の目は幕切れのほんの刹那に、アリスに口づけするアルを映した…。

暢気なヤツだな、人の気も知らねぇで……。

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