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僕ら× 1st.

第25章 in WL --Shu,R

12分経過…そろそろキミを離さなきゃ。
アル兄たちが探し回っていることだろう。

「彼氏が心配するね。"変なお兄さんに体育館への道を尋ねられた"とか言ってごまかしておいて?」

言っとかなきゃ、君はそのまんまを教えちゃうだろうから。

「変なお兄さん?ふふ。わかりました」

くすっとうなずいた彼女は、体育館内に続くドアに消えていく。
ドアの向こうでは、落語研究会が会場を小気味良く湧かせていた。
俺は裏からまわって彼女の行く手を見据える。

彼女は拉致現場をうろついていた晄志に見つけられ、報告を受けて飛んできたアル兄に抱きしめられた。
彼女は恥ずかしがって、抱擁を拒否するけど。

バサッ。
頭上に大きな風を感じたと思ったら、俺の影にカラスが止まった。

「必ず迎えに行く」

俺の呟きに対して、"Never more(これで終わり)"と鳴きながらその陰影をのばしてくる。

何を言うか?
俺と彼女のことを何も知りはしないくせに。
2人でどんな大切な時間を過ごしたのかを知らないくせに。

大丈夫。
キミがくれたたくさんのキラキラした希望を盾に。

まだまだこれから頑張れるよ。

自分次第なんだ。
お前の大きなくちばしから出た音なんかに乗っ取られはしない。

その不気味、現在の俺がまとうのには丁度いい。

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