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僕ら× 1st.

第25章 in WL --Shu,R

「あれは殺意を込めて無理矢理押しこんだんですよね?アル兄」

前を歩いていた居松が振り返って笑う。
このイベントで打ち解けたか、居松はすっかり馴染んでる。

「おうよ。居松風船を徐々に空気を抜いて、ぎゅうぎゅうと…」

と言いながらアルは何かを思い出した様子。

「お前こそ、殺意をもって俺のこと蹴っただろ?あの時点では眠ってるはずだったのに」

「ははっ、エースストライカーの蹴りはこたえましたか」

「ぬかせ。あんなへなちょこキック」

「言いますね。俺と勝負します?負けた方が丸坊主で」

「アホか。これから寒くなんのに」

そういう問題か?
アルの丸坊主か。
意外にいけたりして。

「敗けを認めるんですね?」

居松は顎を上げてアルを挑発する。

「俺、サッカーってわかんねぇもん。オフサイドなんてビミョーだろ?あんなの審判次第じゃねぇか」

どんな試合も審判次第なとこあるけどフィールドが広い程、不正も通りやすい?

「1対1でオフサイドなんてありませんよ」

対戦なら、花野ちゃんをキーパーにすれば楽勝だな。
それでもゴールめがけて力一杯シュートする男は、この中にはいねぇ。

「…花野ちゃんも知らねぇよな?」

アルが彼女に身を寄せるので、花野ちゃんは歩きにくそうに歩幅を変える。

「ノーサイドは聞いたことがあるよ?」

「宮石、ノーサイドとオフサイドは全然違うよ」

晄志がニコニコと指摘すると、ヤツがひとことで解説する。

「空集合の内か外かってことだな」

アル、意味わかんねぇ……。

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