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僕ら× 1st.

第26章 ディスポ --Shu,R

医師は何の疑いもかけずに俺のクルマに乗り込んだ。
この国の言葉を喋ることはできるが、読めないのだと言って、その男に目的地の設定を促し、俺はその挙動を観察する。

男は手帳を取り出して、携帯電話の番号を入力し始めた……。
それで行けるのか?と思ったが、別の会話を進める。

「ね、ね。ドクターってさぁ、若い女のコも診察するの?俺も素質あったらなりたかったなぁ。いーなー」

いーなー、いーなー。
一般男性らしく、無邪気を装う。

「そりゃしますよ。でも、残念ながらそんなに当たりません。あ、今日は救急で珍しく可愛いコ、診ましたね。ついさっき」

当たりました!

「へぇ、どんなコ?」

顔が引きつくのを堪えながら、俺は好奇心一杯という感じで尋ねる。

「JKです。ちょっとロリってて可愛かったぁ。なのに兄が見張ってて、聴診器も服の上からでしたよ。医者なんてそんなもんです」

肩をすくめる医者の横で、和波兄に感謝する。

「救急ってそのコ、どこが悪かったの?」

「何かね、爆発事故に巻き込まれたらしくて。でも大丈夫でした。兄の方は火傷してましたけど、まあ大したことはありませんでした」

「ホントに?」

お前の診察、信用していいのか?
11ケタの数字を入力するのに、何分かける気だ?

「はい。少しでも異常があれば、おっぱい見たり脚に触ったりできたでしょうに」

…うん、よかった。

俺の安堵の笑みを、ヤツはジョークへの反応と曲解する。

結局その番号では目的地を特定できず、男は住所を入力し始めた。
要領の悪いヤツだな……。

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