テキストサイズ

僕ら× 1st.

第26章 ディスポ --Shu,R

「吉坂?で、来たの?」

「来たんですよ、すっごく元気なのが。よくわからないけど、入ってもらいました。何か鍵か粉でも飲み込んでるんでしょうかね?そこで診察交替になったんで結果がわからないんですが」

こいつは何かの捜査だと思ってるのか…。
Wによるアル兄の健康診断?なわけないな。

「血液検査は?」

「してません。健康そのものとしか思えませんでしたから」

「そう、なんだ。とにかく就職おめでとう。ごめんね、憧れの職業だからさ。ついつい質問攻めにしちゃって」

明日、退職にならなきゃいいけど…。
俺は駐車場を行くアル兄たち3人と車イス2台を、ミラーから窺いながら小さく願った。

「いえ、言葉お上手ですね。どちらから?」

「インシュアラーの国だよ。ここよりずっと快適。俺ん家、きょうだい多いからさ、出されたの」

それがリースのカバーストーリーの冒頭。

「そうなんですか、大変ですねぇ。でも一度、行ってみたいですね。イスラム語、少しはできるんですよ」

何語ができたって、やめといた方がいいかも。
今日みたく、利用されるかもよ?

「あの、そろそろクルマを出してもらえますか?」

「うん、インシュアラー(アラー神の思し召しのままに)だからね」

病院玄関に立った祐一朗を確認して、俺はアクセルをゆるっと踏んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ