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僕ら× 1st.

第4章 風速0.64kt --Ar

翌日の火曜日放課後、ダメもとと音楽室に足を向けると、近づくにつれピアノの音が聞こえてきた。
はやる気持ちとは裏腹に、なにげないふうを装って窓からなかを覗く。

いた!
うん、今日は泣いていない。
よかった。

少し草の生えた土の上に腰をおろし、音色に耳を傾ける。
あ、この曲…。

聞きおぼえのある弾む音にあわせて小さく鼻唄を歌っていると、後ろで人の気配がして振りむく。

…教師か。
名前も担当学年も担当教科も、それこそ本当に教師かどうかも知らないけど。

そいつは俺に話しかける。

「こんなとこで何してんの?」

「暇つぶし。てか、あんた誰?」

「誰って…お前って速水の兄だっけ?」

俺の質問に質問で返すなよっと思ったが、…って伊織?

「そう」

「ああ、それで…。俺は、ここの顧問で速水の担任…風邪引くなよ受験生」

そう言って、彼女のいる音楽室に入っていった。

何が"ああ、それで"なのか知らねぇけど、いいなぁ、あいつ。
花野ちゃんと親しげに喋りやがって。

顧問か…。
と言うことは、ここで花野ちゃんがピアノを弾いてるのって部活なわけか?
ひとりで?
ほかに部員がいるのかもな。

しばらくののち、教師は部屋を出ていった。
再びピアノの音が聞こえだす。
さっきと違う曲。
何だろう…ポロンポロンと気持ちいい。

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