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僕ら× 1st.

第26章 ディスポ --Shu,R

その他大勢が同席だけど、花野と初めてのドライブ。

"雨にぬれても"のメロディが条件反射の様に俺の内に流れだし、慌てて俺は会話を探す。

「ではまず、晄志君の家に向かいます。腕、大丈夫ですか?」

2文目は助手席に声をかけた。

「ああ、ちょっと炎が擦っただけでね。ありがとう、こんなのすぐ治りますよ。ひ弱に見えるから、ガーゼなんてなくてもいいくらい」

と和波兄は笑った。

その瞬間、何台ものオートバイが轟音と共に駆け抜けていく。
何だ?集会か?
まだ病院からさほど離れてないってのに、困ったヤツらだな。

スタジャンで統一した10代後半~20代前半の集団。
ある者は後ろに女のコを乗せて。

楽しいのかな?

花野をバイクの後ろに乗せて走るのは、ちょっと怖いな。
いつの間にか、振り落とされてそうで。

彼女とのデートは、自転車でゆっくり走るのが一番。
その方がお互いの声も聞こえるし。

……あ、またトリップしそうだった。
やばいやばい。

一団が通り過ぎた後、間を置いて俺は口をつく。

「鍛えてそうですよ?」

「貴方もね。色も浅黒くて、カッコいいな。それ、地ですか?」

和波兄にそんなこと言われるとは……。
俺と和波兄は、たわいのない会話を時々挟みながら、晄志を送った。

そして、次の進路を和波兄は教えてくれる。

「あ、僕と後ろにいる妹はM公園の近くなんです。ポプラ並木があって、もうそこまで来たら降ろしてもらえれば大丈夫です」

「わかりました。その近くまで来たら、また教えてください」

…タディ(和波兄)、俺、伊織なんだよ?
だから、兄貴の家がどこにあるかなんてしっかり覚えてるよ。

祐一朗が助手席に兄貴を指定したのは、道案内のためじゃない。
俺が兄貴と会話できるよう計らってくれたんだよ。

ずっとこのまま、どこかへ走って行きたかった。
ずっと大好きな人たちを乗せて…。

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