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僕ら× 1st.

第26章 ディスポ --Shu,R

~世尾湊side~

宮石邸からの帰り、助手席に座った祐一朗(居松)が話しかけてくる。

「リィ兄。花野さんアリスと会話できました?」

「ああ、ありがとう。貴重な時間を過ごせたよ」

「それは、よかったです……」

そう。
祐一朗は俺が速水伊織であり、世尾湊であり、リースであることを知っている数少ない男の1人。

ショー終了後の舞台出入り口で晄志の気を反らし、俺が花野を連れ出せるように計らったのは祐一朗だった。

吉坂邸の駐車場手前で尋ねる。

「病院で、何があったの?」

「ああ、あれは……」

クスクスと笑いながらアル兄に降り注いだ惨劇を話してくれた。

「花野さんとアル兄、きっとまだですよ?アル兄ったらすっごく慌ててました」

……だからって、俺には……。

「……俺を泣かせないでくれよ」

「泣いたっていいんですよ?……この台詞、いつかの俺にリィ兄が言ったんですよ?」

「そうだったな。その時はよろしく」

祐一朗の頭にポンと手を乗せ、クルマから降りる。
俺たちが帰ると、「出掛けるぞ」と仕事場にいた小柴さんが立ち上がった。

証拠をつかめたか。
あの医者、助かるな…。

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