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僕ら× 1st.

第27章 牛、歩く --Mkt,Ar

「お部屋にキッチンがあるんだ。キレイすぎっ」

彼女は一度も使ったことのない台所を眺める。
鍋も箸もスポンジさえねぇもんな。

「いや、それ、何であるんだろうな?錆びた水が出るんじゃね?」

「浄水機能もついてるのに…」

口元にグーの手を当てて彼女は流しを覗く。

「花野ちゃんが使うなら、ヤカンとか用意するよ?」

花野ちゃんの手料理、食べてみてぇな…。
それに、裸にエプロンとか……ししし。
"私を食べて?"なんて言われちゃったりして……ししし。

俺の邪な考えを読まれたわけでもないだろうけど、彼女は言葉を濁して話題を変える。

「うーん。ポトフはどこで作ったの?下のキッチン?」

「ああ、あれはみんなでキャンプした時に」

「キャンプ?へぇ、楽しそう!」

「いつか、一緒に行きたいな」

来年の夏にでもと思ったけど、花野ちゃんは高校3年生。
きっとまだまだ外泊は許されないだろうな。

「うんっ!」と嬉しそうに答える彼女に、「映画でも観よう」とベッドの端に誘う。

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