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僕ら× 1st.

第4章 風速0.64kt --Ar

少しづつ目を開けると、彼女がドアの向こうに静かに消えるのが見えた。

俺は、自分の持っている本に目を移す。
機械とだったら、その辺の男の数十倍はうまく喋れるんだけどな…。

アウトローな男たちに囲まれて、女っ気なく育ったんだ、無理ないよな。

それでも柊はこなれてるよな…。
あ、伊織にも婚約者がいるとか…。
ちっ、俺だけかよ。

そのままの姿勢で細かなイワシ雲を見あげていると、ピアノが鳴りだした。
ゆったりとした控えめな曲。

あ、さっきも引きかえす足音がしなかったし。
もしかして俺を起こさねぇように気を遣ってくれてるのかな。
優しいコだな……。

今日は直接礼を言いたいな。
どこに住んでいるのか、帰り道もチェックしたい。
それで、あのメロディを口ずさんだら、また弾いてくれるかな。

それにしても、この曲、子守唄かと思うくらい穏やかで、マジで眠っちゃいそう…。
朝方まで改造すんじゃなかった……。

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