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僕ら× 1st.

第4章 風速0.64kt --Ar

「で、また眠りこけたんだ?マヌケだな、お前」

無人の音楽室へ毛布を返し終えたあと、テラスで女のコたちと喋っている柊を拾って帰る。

まったく親切のかけらもない言いようだな。
俺なら"マヌケだな"じゃなく"マヌケじゃねぇか"ってお手柔らかに言うぞ?

「そんな言いかたねぇだろ?」

俺はこれでも落ちこんでいるんだ。
普段は徹夜なんてどうってことねぇのに、初めは全然眠気なんて感じていなかったのに。

花野ちゃんのあの催眠ピアノ…手強いアルファ波でも出てるのか?

「近づく絶好の機会逃すか?ヌケ作」

「また音楽室に行けばいいだろ?」

「約束もしてねぇくせに、また会えるとか思ってるんだ」

「火金ってわかったし」

「今週だけかもしれねぇぜ?おマヌケさん」

「ああ、俺はマヌケですよ。あのコが毛布を持って来てくれたのに、眠ったふりして本当に寝てしまった大マヌケ野郎ですよ…」

俺がふて腐れると柊は、ふっと笑った。

だけどその後、本当に音楽室においての彼女不在が続き、他の曜日に通りがかっても、それは同じだった。

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