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僕ら× 1st.

第27章 牛、歩く --Mkt,Ar

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なんだかんだと賑やかな中で、ニンジンもレンジを経て鍋の中で煮える頃、和波さんが様子を見にやって来た。

「お、いい匂いしてるな」

「和波さんも食べませんか?」

今は、彼女がサラダの盛りつけをしている。
イチが使い終わった道具を洗って、柊は相変わらずカメラマン。

「俺はもう食べたし、残ったら味見だけさせてもらおうかな。
じゃあまた、あとでね」と和波さんは出ていった。

そして、「いただっきまーす」と囲う食卓。

余計なのが2匹混じってるけど、家族みてぇでいいなぁ。

「美味いよ、花野ちゃん!サラダも!」

「うん、美味しいね!よかったぁ」

ニコニコする彼女に、先程から抱えている大きな疑問を放つ。

「なぁ、花野ちゃん。料理できるじゃねぇか?俺、びっくりだよ」

あの涙が偽物だとは思わないけど。

「え?だってね。祐一朗君がホント手際よくって、ほとんどやってくれたし。ルーは市販のを使ってるし。サラダもスライサーとハサミで切って、ドレッシングは買ったものだし。ご飯も早炊きで。……あきれてない?」

ルーやドレッシングから作らなきゃいけないとか思ってたのか?

それってわかんねぇけど、主婦プロレベルでは?
俺はそこまで彼女に要求しないぞ?

「今日はみんながしてくれたけど。私ひとりじゃモタモタして、3倍以上時間かかるよ?」

忙しけりゃ毎日、白ご飯だけでも文句は言わねぇ。
ってか、誰かが作る。

「充分だよ。こんなことで悩んでたの?」

それプラス、俺を拒否しちゃった後ろめたさか…。

すると、彼女は不思議なことを言う。

「でも、侑生君は食通だって聞いたし」

向かいで聞いていた2人も失礼にも"?"を浮かべる顔。

「そんなの誰に聞いた?」

「え?侑生君のお友だち…」

……誰だよ?

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