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僕ら× 1st.

第27章 牛、歩く --Mkt,Ar

と、イチが話しだす。

「花野さんと料理できて、本当に楽しかったです。アル兄抜きでも、またやりましょうね?」

「俺の彼女を口説くな!」

俺に耳を貸さないイチは、サラダを指で摘まんだ。

「アル兄はタワシでも食べててください。……花野さん。これって、かいわれ大根ですか?俺、苦手だったんですけど、これは食べやすいです」

かいわれ大根?大根の葉っぱ?
モヤシより細くて、とても大根から生えているようには見えねぇけど?

じゃなくて!

タワシでも食えとは何だよ?

「それね、ブロッコリースプラウトっていうの。かいわれ大根より辛味が抑えられてるでしょ?」

「はい、とても美味しいです!ブロッコリーなんですかぁ」

スプラウト話についていけない俺は、混じりたくてわかっている質問をした。

「この赤いのはピーマン?」

花野ちゃんに尋ねたのにイチが説明しだす。

「アル兄、それはパプリカだよ。でもピーマンも、赤くなりますよ。日持ちがしないから緑が出回ってるだけで、そのまま収穫しないでいると赤くなるんです。本当は赤いピーマンの方が苦味が少なくて美味しいんですよ」

「へぇー、そうなんだぁ」とイチのトリビアに面白がる花野。

「んだよ?イチ。お前、野菜に詳しいのな」

不服ながら俺が褒めると、斜めの視線で見てくる。

「プランターで野菜作って生活してましたから。……で、俺の名前、"イチ"で定着ですか?」

「"ワン"の方がいいか?」

「じゃあアル兄は"ゼロ"?」

んでだよ?

「0を掛けたら、俺の名前なくなるじゃねぇか!」

っと、そういう意味なのか?
…違うだろ、きっと。

「数字バカどもはほっといてさ、花野ちゃん。俺のこと、柊君って呼んでよ?」

「お前、俺の彼女にややこしいこと提案すな!ギピ!」

そんな呼び方されたらっ!
"侑生君"なのか"柊君"なのか、聞き取り辛ぇだろっ?
この先、ベッドの中でも俺っ、お前に出てこられちゃたまんねぇよ…。

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