テキストサイズ

僕ら× 1st.

第27章 牛、歩く --Mkt,Ar

***

次の週、大学は冬季休暇に入ったため、俺は夕暮れ前の駐車場で彼女を待つ。

柊は朝から彼女と早めのクリスマス。
だから今日は大輔と一緒に来たけど、ヤツは煙草を吸いに出ていった。
ま、俺に気を利かせてくれたんだろうな。

本日、部活のない彼女は、授業が終わるとすぐに来てくれる。

大輔を置いて出発するわけにもいかねぇので、後部座席に彼女と並ぶ。

「なぁ、花野ちゃん。クリスマスに何がほしい?」

「んーと。ラスク!」

俺が聞くと、子どもみたいに嬉しそうに答える。

「残るものでだよ。2人のファーストクリスマスなんだぞ?」

何でそんなバリバリの駄菓子的なもんなんだよ。

「残るもの……」

「おうよ。そんで、クリスマスにはプール行きたい」

ふたりの距離をもっと縮めたいんだ…。

「あ……じゃあね、クリスマス前にいただいてもいいかな?」

「え?いいよ?明日買いに行こ!何がほしいの?」

待てないくらい欲しいものがあるの?

「あのね、えと……」

そこで彼女は、もじもじし出す。
もしかして婚約指輪か?
結婚の確約ができるんなら、俺としては願ってもないけど。

彼女の右薬指、裏側に記念の日付を刻んだリングを見つめる。

「身につけるもの?」

「うん、そうなの」

やた!ビンゴ!

「あのね?こないだ試したらサイズが合わなくなっちゃってて」

え?指輪してるじゃね?
まさか、サンタドレスか?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ