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僕ら× 1st.

第4章 風速0.64kt --Ar

「最近、花野ちゃんに会えねぇ」

先々週の狸寝入り以来、全然見かけなくなってしまった。
禁断症状ってわけでも、台風接近中のせいでもないけど、落ちつかねぇ。
未だ紙切れでしかできていない毛布のお礼と、帰り道ストーキングの課題が俺を悩ませる。

「そりゃそうだろ。3年以外は体育祭の準備で忙しいんだ」

一週間以上悶々としていた俺を、柊は数秒で一蹴した。

「そうか!」

体育祭の準備!
そんなワザが隠れていたか。
俺、視野が狭くなってたなと反省し、最終授業のなかほどから机にへばりついていた身体を引きはがす。

「っくっくっ……教室に行くの?」

「ああ」

「俺も探してやるよ。何年生?」

「…知らねぇ」

「マジか、この男」

柊は不思議な生き物でも見ているかのような不躾な視線で、俺をまじまじと見てきた。
もう、マヌケと言う気も失せたらしい。

「きっと1年生だと思う。去年見かけてたら、好きになってただろうし」

「言うね」

柊は声をあげずに"い"の口にして笑った。
お前は顔文字か!

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