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僕ら× 1st.

第27章 牛、歩く --Mkt,Ar

「ありがとうございました!」

店員に見送られ、花野と手を繋いでビル内を歩く。

「侑生君。買ってくれてどうもありがとう」

「いいのがあってよかったな。もう、すっげ似合ってた」

早くプールに行きたいな。
でも、あの姿の花野に触れずにデート?
それは、厳しくないか?俺。

俺が葛藤しているのも知らずに、彼女は暢気に尋ねてくる。

「ね、侑生君はプレゼント…何がいいかな?道着とか服は?」

「今のとこあるからなぁ…」

「んーと。スーツは?1着だけならこれから足りないよ?」

「うん、それは就職する時にお願いするかも」

おおっと、就職していいのか?俺。
できれば親父とは関係のない企業に入りてぇけど、"お前は跡取りだ"と事あるごとに言われてるのに?
もうこの手は染まっているのに?

どっちにしても、花野ちゃんと結婚するつもりだけど……。
あれ?俺まだ返事、貰ってねぇな。

俺のダークサイドを知っても、彼女は見離さないでくれるだろうか?

浮き上がった後、一気に下降した俺の気持ち。
そんな不安を振り払うように、キラキラした彼女の声が入ってくる。

「じゃあ、ブーツ!似合うと思うの!」

「季節限定だな」

「ブーツとサンダル!」

「そんな歌があったな。バースデーに半袖と長袖をプレゼントするっての…。ん、じゃ年中履けるスニーカーを頼むよ。これ、擦れてボロくなってきたし」

「靴屋さんに出発!」

張り切る彼女の手を引いて呼び止める。

「店こっち!」

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