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僕ら× 1st.

第27章 牛、歩く --Mkt,Ar

「ここで待ってて?持ってくるから。あ、柊。手伝って」

リビングに彼女を通し、ラボまで柊とアルロボを取りに行く。

行きしに柊が言うには。

「方角を把握してないヤツなんて多いぞ?俺たちは訓練を受けたらかわかるだけだって」

「そうなのか?」

「ああ。だからそれだけでは方向音痴とは言えねぇよ。花野ちゃんは天然方向音痴だと思うけどな。目の付け所が直感的」

やっぱ言うんじゃねぇか。

ラボに着いてアルロボを呼ぶ。
侑花は…、花野ちゃんとそっくりな顔を見せたら、気味悪がられるかもしれねぇし今回はパス。

「お前、俺まで取りに行く必要あったのかよ?」

台車に乗せて戻る途中で、柊がケチをつける。

「あの家に花野ちゃんとお前を2人きりになんて、させらんねぇ」

「そんな警戒しなくても」

俺もお前が襲うとかは思ってねぇけどな。

「あることないこと話す気だろ?花野ちゃんって何でも疑わずに信じちゃうから」

「ああ。からかうの面白ぇよなぁ」

こいつは俺だけじゃ飽き足らず、彼女まで。

「ふうっ」と息をつき、リビングのドアを開ける。

「じゃ、花野ちゃん。俺の部屋に行こ?」

すると彼女は"え?"という表情をする。

……ここで、柊と3人で過ごすと思っていたか?

俺はそんな信用ねぇか?
確かにそういうことをしようとしたけどさ。
彼氏なんだもん。
花野ちゃんのことが好きなんだもん……。

でも、大丈夫。
俺が理性を失ったら、アルロボが騒ぐように設定を入れたから。
こんなことでキミを失いたくないから。

「行ってもいいの?」

「そりゃそうだろ?そのためにキレイにしてるんだ。ドアは閉めないから」

不安な瞳の彼女は、小さく頷いて俺についてきた。

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