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僕ら× 1st.

第28章 カーバンクル --Ar,Kn

もう少しで花野ちゃんと……。

興奮せずにはいられない俺のスマホの振動音が響いたのは、その角を曲がって進行方向に俺の家が見えた時だった。

もう、出なくてもわかる。
小柴の家は煙に包まれていた。

路肩にクルマを停めてスマホと話す。
相手は大輔だった。

「何があった?」

「今、確認中です。アル兄は柊兄と安全なところに」

そう言って電話は切れた。

「残念っ、花野ちゃんを家に送るよ。俺たちの家、燃えてるみたい」

それを聞いた柊は、キュキュッとタイヤを鳴らしてUターンする。

「ええっ!大変じゃない!私っ、ここで降りるから!」

「そんなことさせねぇよ。ここで俺らが帰っても火が消えるのを突っ立って見るくれぇだし。今、俺らが一番しなきゃいけないことは、花野ちゃんを無事に送ること。だな、柊?」

「おう!」

遠ざかる俺の家を見ながら、彼女が言う。

「アルロボ君、逃げられたかな?」

「大丈夫だよ。ヤツは普段倉庫(吉坂本邸)にいるから」

「それならちょっとよかった…」

「ああ。心配してくれてありがとうな」

あの小柴家から出火…放火だな。
一体どこのどいつだ?
俺と花野ちゃんのクリスマスを!

宮石邸前で彼女に「また今夜に連絡する」と告げて、現場に戻った。

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