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僕ら× 1st.

第4章 風速0.64kt --Ar

花野ちゃんと一緒に体育祭の準備をしているのは、幼さの残る顔立ちの男生徒だった。

「へぇ、宮石の視点はそこなんだ」

「だって、同じような後ろ姿での登場シーンなのに、人物が違うだけで音楽も全然違うんだもんっ。おもしろかった!」

ふうん、映画か何かの話か…。

「そうだったか。俺、また見直してみるよ。あの音楽は、主題歌と…」

言葉に詰まったあと、男生徒は花野ちゃんに一瞬だけ目を向けた。
視線の動きと同時に止めた作業の手を、再開させる。

「本気だぜ、好きなのさ~しか覚えてなかったよ」

ん?今のタメは……。

「ゴーゴー、レッツゴーゴー!」

「っはっはっ!」

楽しそうに彼女が続けると、男は笑った。

何のことかわかんねぇけど、花野ちゃんってノリがいいな…。

「何回見てもおもしろいねっ!私、いっぱい笑っちゃった!貸してくれてありがとう」

「おう。あのドラマは俺のなかでは最高峰なんだ。宮石はお気にの俳優とかいないの?」

ふうん、ドラマね…。

「うーん。私、人の顔と名前を一致させるの苦手なのよね」

うおっ、じゃあ俺のことなんて、もうすっかり……。

「お、俺のこと、ご存じですか?」

それ、俺が聞きてぇよ…。

「やだ、知ってるよ。依田君たらヨーダのインパクトおっきかったし」

「ああ、ヨーダでよかった」

"ヨーダ"?
マスター・ヨーダのことか?

でもさ、何だよ。
ふたり、いい感じで喋ってるなあ。
これって……ヤキモチなのかな?

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